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一般講演(ポスター発表) P2-065
森林を構成する樹木は、環境条件や競争条件などの影響を受けながら成長している。温帯域に成育する樹木は、年輪の形で過去の成長履歴を保持しているため、年輪幅を測定することで過去の成長を調べ、気象条件などとの関係から直径成長量を説明する要因を探る研究がこれまで行われて来た。しかしながら、これらの研究では樹木個体の特性を考慮に入れた解析が行われていないことが多い。本研究では一般化線形混合モデル(GLMM)を用い、個体の特性を考慮した形でアカエゾマツの直径成長を決定する要因を明らかにすることを試みた。
2006年に北海道雄阿寒岳(標高1371m)の500m, 800m, 1100m地点に調査区を設定した。各地点でアカエゾマツ林冠木100個体をランダムに選定し、デジタルマイクロプローブを用いて年齢を調査し、過去40〜150年の直径成長の履歴を得た。そのうち過去40年分を今回の解析に用いた。
2006年の直径成長量を従属変数に、過去の直径成長量を独立変数にしたGLMM解析とAICに基づくモデル選択の結果、過去の成長量が現在の成長量に影響を及ぼしていることが明らかになった。特に直近の成長量の及ぼす影響は大きく、近年成長の良好であった個体は、その良好な成長を持続する傾向にあることが明らかになった。また、この傾向には標高間による差は見られなかった。これらの結果から、ある程度成熟した森林では、個体が成育適地を占めることで長期に渡り良好な成長を続けることが示唆された。
これらの結果をもとに、アカエゾマツの直径成長に関わる要因について検討する。