| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-073

四国・大野ヶ原ブナ林における主要樹種の齢構造と共存機構

*神岡新也,二宮生夫(愛媛大・農学研究科)

四国のブナ帯には、ブナとウラジロモミの混交林分が存在している。前回大会の発表では、ブナとウラジロモミの優占する階層や水平分布様式など、空間的すみわけによる混交林分内での共存機構を示唆した。しかし、両種の寿命や成長速度は異なり、両種の共存機構解明には時間軸での解析が必要となる。本発表では、ブナとウラジロモミの齢構造と時間的共存機構を明らかにすることを目的とした。

調査は、愛媛県大野ヶ原・小田深山ブナ林でおこなった。本地域は、太平洋型に区分され(藤田,1987)、ブナの分布南限域に位置する。一方、ウラジロモミは本地域が最南限とされる(矢頭,1964など)。昨年度設置した1ha調査区内のブナ、ウラジロモミの各30個体から成長錘でコアを採取し、年輪幅を計測した。

調査の結果、林冠層を優占するブナは、ウラジロモミに比べて高寿命であり、長期にわたって林冠層での占有を可能にしているものと考えられた。一方、亜高木層を優占するウラジロモミ(神岡ら,2007)は、年輪成長量の急激な増加が同調的にあらわれた。この変動は台風襲来と一致していることから、林冠疎開によって成長が促進されたものと考えられた。これは、ブナが林冠を占有している場所では、ウラジロモミが亜高木層を占有しているが、台風などによって林冠疎開が発生した場合には、ウラジロモミが急激な成長によって、ブナに代わり林冠層を占有する可能性を示唆している。以上の結果から、現在の空間的すみわけは、両種の寿命、成長パターンの違いにより形成されたと考えられた。

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