| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-074
これまでに演者らは,河畔林の一型としてコナラ林を報告し,コナラ−ヤマブキ群集を記載した.しかし,コナラ河畔林がいかなる撹乱体制の下,どのようなプロセスで形成されるのかは明らかではない.そこで,本研究ではコナラ河畔林の形成過程を河川の撹乱体制との関係から考察することを目的として,小武川(富士川水系)の海抜800m付近において植生図を作成し,得られた植生図と過去の河道変遷との関係を検討した.さらに,現地にて植物社会学的方法に基づく植生調査と樹木を対象とした毎木調査から河畔林の種組成と群落構造を把握し,コナラ河畔林の形成過程について検討した.
調査対象区間は谷底堆積低地を呈しており,谷底面にはコナラ,アカマツ,ヤシャブシ,ケヤキの各種が優占する稚樹群落,低木林,高木林がモザイクに分布していた.空中写真や日最大降水量の推移と照らし合わせると現在の植生配分は過去の流路形態とよく一致していた.また,植生調査によって得られた資料をDCA法によって序列化した結果,1軸は群落の発達段階に対応し,2軸上ではアカマツ・コナラを主体とする群落とヤシャブシ・ケヤキを主体とする群落とが分離して配列された.さらに,毎木調査の結果からアカマツの優占する低木林や高木林ではコナラが単木的に生育しており,それらの個体サイズは同一方形区に生育するアカマツに比べて樹高,胸高直径ともに小さいことが分かった.
上記の結果から,コナラ河畔林はアカマツの優占する稚樹群落・低木林・高木林を経た後に形成されるものと考えられた.また,こうしたプロセスは数十年に一度程度の頻度で発生する大規模増水に対応していると考えられることから,河川域におけるコナラ林の成立には扇状地帯特有の撹乱体制や土砂の堆積様式が大きく関係していると考えられた.