| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-076
【目的】先駆性の樹種は実生の定着に好適なハビタットを検出するために、林冠の撹乱によって上昇するR/FR比(赤色光/遠赤色光)と地温の日較差(変温)などをシグナルにして発芽することが知られている。本研究は温帯林において樹種構成やその撹乱程度や土壌深度によってR/FR比と変温がどのように変化するか、さらに先駆性樹種がR/FR比と変温のどちらをより重要なシグナルとしてハビタットを検出しているかを明らかにすることを目的とする。
【方法】落葉広葉樹林と常緑針葉樹林において林冠の撹乱および土壌深度とR/FR比・変温の関係を調べた。次に、室内発芽実験によりハビタットと種子サイズが異なる先駆性の樹種数種(シラカンバ・ウダイカンバ・ヤマグワ・タラノキ・カスミザクラ・オニグルミ等)の光(遠赤色光・暗黒・白色光)および温度(変温・恒温)に対する発芽応答を調べた。
【結果】R/FR比と変温幅ともに林冠下に比べギャップでは高かったが、R/FR比は2〜3mmの土壌深度で急激に低下した。しかし変温幅は土壌深度が1cm程度までゆるやかに低下した。室内発芽実験では、小サイズ種子で大・中ギャップに侵入する種は光質(高いR/FR比)または光質と変温の両方に依存して発芽した。一方、小・中ギャップに定着し比較的大種子を持つ種は光質よりも変温に依存して発芽した。さらに大種子を持つオニグルミはどちらの影響も受けなかった。
【考察】大ギャップに定着し小サイズ種子を持つ種の発芽が光質に大きく依存し変温への依存性が低いのは、ギャップの比較的浅い土壌深で発芽し実生出現が困難な深さでの発芽を回避しているためだと考えられる。一方、種子サイズが大きい種が変温に依存して発芽するのは、比較的深い土壌深からの発芽が可能であり、光が届かない土壌中に埋土していても変温をシグナルに確実にギャップを検出するためだと考えられる。