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一般講演(ポスター発表) P2-082
群馬県では松枯れの被害が拡大し,マツ林からコナラ林などへの樹種の転換が必要になってきている.松枯れ後は放置しても基本的には,落葉広葉樹林へ遷移すると考えられるが,森林の構造や配置によっては,稚樹の定着が阻害される恐れがある.とくにこれまで頻繁に下草刈りなどの林床管理がされてきたマツ林では,広葉樹の後継樹が生育していないため,管理を停止後に遷移が遅延する可能性がある.そこで,これまで年1回の下草刈りがなされてきたアカマツ林及びコナラ林において,管理停止後の広葉樹稚樹の定着過程をモニタリングし,コナラ稚樹の発生,生存に及ぼす影響について解析を行った.なお,アカマツ林には様々な割合でコナラ成木が混生している。
調査は赤城山麓の電力中央研究所構内林において,2004年に管理停止実験区をアカマツ林,コナラ林に各3箇所設置した.それぞれ,1m×1mの方形区を25箇所設置し,稚樹個体群とそれらの発生・生存に影響する微環境要因(林床植物,光環境など)に関する調査を行った.
管理停止後はコナラの稚樹が多く発生したが,コナラ林に比べアカマツ林の方が,コナラ成木の胸高断面積合計に対する稚樹数が多く,稚樹の生存率も若干高かった.稚樹の発生の有無に対する微環境要因の影響を,ロジスティック回帰によって解析したところ,アカマツの胸高断面積合計が正の,コナラ成木からの距離およびアズマネザサの被度が負の有意な説明変数として選択された.同様に,発生した稚樹の翌年度の生存に対する微環境要因の影響を解析したところ, 発生年の稚樹の高さが正の,アズマネザサの被度が負の有意な説明変数として選択された.
本調査地域におけるアカマツ林からコナラ林への遷移の初期段階では,コナラ稚樹の定着プロセスにアズマネザサの被度が強く影響していることが示唆された.