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一般講演(ポスター発表) P2-083
本研究は、火入れ地および火入れが放棄された火入れ跡地を比較することにより、攪乱要因としての火入れの温度および微地形による環境条件によって、火入れ放棄後およそ30年までの植生遷移にどのような違いが生じるかを明らかにすることを目的とした。
調査地は岡山県蒜山地域の火入れ地および火入れ跡地(3年目・4年目・10年目・20年目・26年目)である。火入れ地および10年目を除く火入れ跡地については尾根と谷に地形区分し、それぞれの斜面を上部、中部、下部に区分した。10年目の火入れ跡地は尾根と谷に区分せず斜面を上部、中部、下部に区分した。調査は斜面位置ごとに1 m×1 mの調査区を10ヶ所ランダムに設置し、ススキとササの調査、稚樹調査、土壌環境調査、全天空写真撮影および斜度計測を行った。また10年目以降の火入れ跡地においては各斜面位置に20 m×20 mのプロットを設置し毎木調査も行った。また、2005年から2007年までの3年間の火入れの燃焼温度を推定し、火入れの直前に植生を刈り取りバイオマスを測定した。
バイオマスと火入れの燃焼温度には正の相関があり、斜面の下部に向かうほど燃焼温度が高くなる傾向がみられた。また、草本の優占度が高かった尾根の下部や谷の斜度の低いところではA0層が厚く堆積しA層が柔らかかったことから、他の斜面位置に比べて土壌の水分条件や栄養条件が比較的良好であると推察された。燃焼温度および微地形の違いによって、火入れされた年の植生分布は異なっていた。またこの時期に決定された植生分布はその後の遷移に影響し、尾根と谷という微地形および上部・中部・下部の各斜面位置での林分構造に違いを生じさせていた。