| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-085

MacarangaおよびMallotusの先駆種‐極相種間にみられる地上‐地下部の相対成長関係の違い

*平澤建(鹿大院・理工),鈴木英治(鹿大・理),Herwint Simbolon(LIPI)

樹木種の先駆種と極相種は異なる光環境を好むことが知られており、それに対応するように地上部の形態も異なっている。森林の遷移では光環境だけではなく土壌環境も変化するので先駆種と極相種の地下部の形態も異なっている可能性がある。しかしこれらに関する地下部の研究は少ない。そこで、本研究では先駆種と極相種の地下部の形態が異なるかどうかを解明することを目的とした。系統的な影響を最小限にしながら先駆種と極相種の比較を行うためにトウダイグサ科の2属を用いた。

インドネシア東カリマンタン州のブキットバンキライで調査を行った。Macarangaの先駆種3種、極相種2種とMallotusの先駆種1種、極相種1種を材料とした。対象種の樹高10cm〜190cmの標本の根全体を注意して掘り取り、直根長・最長側根長・茎長・基部直径・樹冠幅を測定した。また、主根・側根・茎・枝・葉身・葉柄の乾燥重量を測定した。そして種間の違いを分析するために相対成長関係を用いた。

先駆種は極相種より側根重量が多く、また浅い根系を持ち大きな樹冠面積を持つ傾向があった。一方、極相種は先駆種より主根の乾燥重量が多く長い直根を持っている傾向があった。

これらの結果は、先駆種は土壌表層に側根を発達させより多く栄養塩を吸収し明条件下で速く成長するのに適していることを示している。しかし、浅根性の先駆種はまれではあるが確実に起こる厳しい乾燥の期間の高死亡率というリスクを負っているだろう。一方、極相種は長い直根を持ち主根へより生体量を配分することにより、乾燥に耐性があり光の乏しい環境下でも生存するために同化物質の貯蔵や物理的防御を強化しているのであろう。

先駆種と極相種のあいだには生育環境への適応の結果として主根と側根への配分のトレードオフがあるようだ。

日本生態学会