| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-086

エゾマツ実生の生残および成長に適した条件〜播種後4年間の生残動態による評価〜

*飯島勇人,渋谷正人(北大院農)

北海道に生育するエゾマツは倒木以外からの更新はほとんど見られないため、エゾマツの更新に適した倒木の環境条件を具体的に明らかにすることは、北海道の針葉樹天然林の維持機構を明らかにする上で重要である。本研究では、競争個体がいない倒木に播種を行うことで、過去の研究では明確に出来なかった倒木の環境条件と実生の生残、成長の関係を明らかにすることを目的とした。2002年5月に林内の26本の倒木上に播種を行い、播種当年は1週間間隔、その後は1ヶ月間隔で2006年10月まで生残を調査した。2006年10月に、各倒木で10個体実生を採取し、葉、幹、根別に絶乾重量を測定した。また、倒木上の環境条件として、rPPFD、倒木のコケの高さ、倒木の腐植層の量を測定した。実生の生残に影響していた環境条件はrPPFDとコケ高であり、明るいほど生残率が高く、コケの高さが20 mm以上の倒木で他の倒木より生残率が低い傾向が見られた。実生の個体重に影響していた環境条件はrPPFDのみであり、明るいほど個体重が大きい傾向が見られた。また、新しい倒木は根を伸長させにくいとされているが、根への配分比はコケ高や腐植層の量の影響を受けていなかった。以上から、エゾマツ実生はコケがない新しい倒木であっても根を伸長させることが可能であり、明るければ十分に生残可能であることが示された。新しい倒木に定着可能な樹種は多くないため、新しい倒木はエゾマツの重要な更新立地として機能していると考えられる。

日本生態学会