| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-092
【トレードオフモデル】 老熟した森林には様々なサイズのギャップがあり光や水分などはヘテロに分布している。このような環境下で構成種の間で、生存と成長の間にトレードオフ関係が見られる場合、それらの種群は共存できる(Chesson 2000)。例えば、ギャップで成長率が高い種は林内では生存率が低く、逆に林内で生存率が高い種はギャップでの成長率は低いという関係があれば、これらの種はそれぞれのハビタットでの更新確率は同じとなり共存できる。
【熱帯林・温帯林に関わらず成立する?】 このようなトレードオフモデルは、熱帯林での報告例は多いものの(e.g. Hubbell and Foster 1992; Wright et al. 2003; Baraloto et al. 2005; Gilbert et al. 2006)、温帯での検証例は少なく野外で調べられた例は極めて少ない (Schreeg et al. 2005,Seiwa 2007)。これは、温帯では多様性研究そのものが盛んでないためなのか。それとも単純なモデルが成立しにくい要因があるのではないか?
【温帯林ではフェノロジーが大事】温帯林は熱帯林に比べフェノロジー(季節性)が顕著である。特に落葉広葉樹林では発芽タイミングが実生の命運を大きく左右する。早く発芽することにより被陰を避け早春の光合成により防御や貯蔵への投資が可能となり林内でも生存率を上げるだけでなく,成長にも寄与する。一方、遅い発芽は外敵の加害や被圧を招き、林内だけでなくギャップでも成長・生存率を下げる。したがって、発芽タイミングのバラツキは単純なトレードオフの成立を妨げるだろう。本講演では、落葉広葉樹12種における生存・成長のトレードオフ関係を発芽タイミング・種子サイズ・葉の寿命を含めた構造方程式モデルで解析した結果を報告する。