| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-095
米国ワシントン州カスケード山脈に位置する,積雪量の異なる2箇所の遷移後期林において,優占針葉樹種であるアマビリスモミ(Abies amabilis Douglas ex J. Forbes)の稚樹を対象として,その生育様式を調べた。特に,積雪量に応じた樹形の形態的変異性に着目した。アマビリスモミの稚樹は,遷移後期林に特有の暗い林床において,光獲得効率を高めるための典型的な傘型樹形を示していた。この独特の樹冠形態を維持するために,個体の生育する光環境に応じて,葉/シュートレベルでの同化産物の配分様式や葉群の配置様式を変化させることが分かった。そして,その結果として,枝や個体レベルでの形態的な可塑性を示し得ていた。積雪圧がある中で傘型樹形を保つには,多大な支持コストを必要とする。暗い林床に生育する稚樹は,葉や枝の寿命を長くすることで,毎年生産する葉量を抑え,幹などの支持器官への投資の増大を可能にしていた。これは,積雪量の少ない森林に比べて,積雪量の多い森林に生育する稚樹で,特に顕著だった。多雪地帯の遷移後期林では,被陰されている稚樹が積雪圧にどのようにして耐え得るのかが,樹木の更新,ひいては種の分布に強く関わる。以上のことから,アマビリスモミは多雪地帯で優占できる特性を持つことが明らかになった。