| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-097

江戸時代の伐採以前のヤクスギはいつ更新していたか?

木村勝彦(福島大・理工)

原生的といわれる屋久島のスギ林においても、林冠木の大半は樹齢200-300年で、現在の森林は江戸時代の伐採直後に定着した個体が大部分を占める、いわば老齢二次林である。本研究では屋久島に残存するスギ「土埋木」の年輪解析により伐採以前の本来の原生状態であった林分の復元を試みた。

<材料>土埋木とは江戸時代に伐倒された木材の切株や倒木が残存したもので、過去の伐採跡地などから搬出され、森林管理所の貯木場に一時的にストックされる。表面は腐朽で失われているものの、保存状態はかなり良好で、中心部分まで残っている材が半数以上を占める。なお、今回使用した土埋木は全て安房川流域で得られたものである。

<年輪の計測と解析>土埋木の木口面上に中心を通る測線を1、2方向設け、その部分をカッターナイフで年輪が明瞭に見えるように処理した。次に各測線部分の脇にメジャーテープを張り付けて、マクロレンズを装着したデジタルカメラで撮影し、コンピュータ上で表面側から中心側に向かって1年毎の年輪幅を計測した。なお、一部試料は森林管理所からディスク状試料を提供していただき、研究室でスキャナを用いて計測した。

計測したデータは2139年分のヤクスギの標準年輪パタン(木村ほか,2005)に対してクロスデーティングをおこない、年代決定をおこなった。

<結果>2006年に撮影した試料のうち中心を持つものは17個体あり、推定直径は70cm〜120cm, 年輪数は213年〜756年であった。このうち、中心の年代が決定できたのは14個体で、かなり高い割合で年代が決定できることがわかった。

これらの個体の定着時期を見ると、西暦956年から1087年の131年間に6個体が含まれ、この年代がスギの定着に良好な時期であったことが示唆された。伐採が1650年頃だとすると、当時のスギ林は樹齢650年前後の個体を多く含む林分であったものと考えられる。

日本生態学会