| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-108

シカが土壌動物群集に与えるインパクトの状況依存性:ギャップ・非ギャップの比較

*北村智之, 宮下直(東大・農・生物多様性)

シカや家畜等の大型植食者は採食・踏圧・排泄等により植生や土壌の物理化学性といった環境を改変する。さらにそれらの環境改変を介して土壌動物の種数や個体数に変化が及び、リター分解などの物質循環にまで間接的に影響が波及する。こうした大型植食者による土壌生態系への影響は、草原と森林といった遷移の進行段階の違いに応じて影響の方向性や大きさが状況依存的に異なるということが報告なされている。一方、一つの森林内でも光環境や傾斜といった微環境の不均一性があるため、それらの環境条件に応じて大型植食者の影響の程度は異なると考えられるが、こうした視点からの研究はほとんど行われていない。

本研究では森林内の光環境の違いによって大型植食者の土壌生態系への影響が状況依存的に異なることを示すことを目的とした。ニホンジカが高密度に生息する房総丘陵において、ギャップと非ギャップの土壌物理性・リター分解率と大型および中型土壌動物群集がシカ排除柵の内外でそれぞれどのように異なるかを比較した。その結果、土壌物理性では土壌硬度・体積含水比・孔隙率でシカの影響が検出でき、前2変数については光環境の違いに応じてシカの影響の大きさの程度が変化することが示された。特に土壌硬度については、シカ不在下ではギャップの方が土壌が軟らかいが、シカ存在下ではギャップで非ギャップよりも硬いという環境特性の逆転がみられた。リター分解率はシカが存在することで有意に減少し、シカ不在下ではギャップで分解率が高いがシカ存在下ではギャップ・非ギャップで分解率に差がなく、光環境による影響の違いが検出された。徘徊性の大型土壌動物とリター層の中型土壌動物では、シカによる個体数の減少はみられたが、光環境によるシカの影響の違いは検出されなかった。この点については更なる検証が必要とされる。

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