| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-112
自然界には多様な生物種が存在し、捕食−被食関係によってそれぞれの種間を結びつけたものは食物網と呼ばれる。食物網に関する重要な生態学的問題のひとつに、自然界における食物網の構造やパターン、あるいはそれらがどのような特性を持っているかという疑問がある。こうした疑問に対するアプローチとして、近年、生物種をノード、捕食−被食関係をリンクとみなして食物網をネットワークとして捉え、その性質について議論を行うという研究がたくさんなされるようになってきた。
しかし、こうしたネットワーク研究の多くは個別のリンクについて着目することはほとんどない。すなわち、個々の種間において、なぜ、あるいはどのようにして互いの捕食−被食関係が成立しているのか、という疑問について着目している研究はほとんどない。これに対して、生態学では古くから、この疑問について多くの研究がなされ、それらは摂餌理論と呼ばれている。
従来の生物の摂餌に関する研究では、そのほとんどが時間当たりのエネルギー獲得効率を最大化するように餌を選択する戦略こそが最適であると予測してきた。しかし、実際の生物が複数の元素から構成されることは明らかであり、生物の相互作用が一つでなく複数の元素により制約を受ける可能性は当然存在する。生態化学量論は、生物の成長・繁殖に関して、エネルギーだけでなく窒素やリンなどに代表される栄養素といった、複数の元素が生物の成長を同時に制約する点を特に重視する立場である。
そこで、本研究では個体ベースモデルによる捕食−被食モデルを用いて、捕食者の内生的特性と餌の栄養学的性質との間の関係が、生物個体の摂餌に際する意思決定にどのような影響を与えるか、そして、そうした摂餌戦略に従う生物個体の振舞いがどのような食物網を構築するかについて調べた。