| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-115
干潟に棲息する二生吸虫類の主な第1中間宿主は巻貝類、第2中間宿主は甲殻類と魚類、終宿主は鳥類であるため、吸虫の寄生率や種の多様度は宿主群集の密度や種の多様度に依存することが期待される。吸虫の甲殻類や魚類から鳥類への移動は、鳥による捕食によるため、エサ種の分布や密度、行動に種内・種間変異があれば食われやすさに違いが生じるであろう。また、護岸に近いか等によりヒトの存在も干潟内で採餌する鳥の飛来数ひいては捕食数に影響すると思われる。吸虫の適応度を考慮すると、鳥による被食率の高い種または場所で寄生率や多様度が高くなるはずである。したがって、鳥による食われやすさがエサ種ごとの、また同一種でも場所による吸虫の寄生状況に影響する可能性がある。和歌川河口干潟は面積が約35 haと中程度の広さだが、場所により底質環境などが異なり、それに応じて生息する底生動物の種類や密度も異なる。以上のような干潟内の環境要因の変異が、どのように吸虫の寄生状況に影響しているかを知るために、干潟内の10箇所で次の調査を行った。(1) 採餌する鳥類の種と個体数、(2) 鳥類の採餌行動、(3) 巻貝類、カニ類の種と密度、バイオマス(今回は第2中間宿主としてカニ類のみ調査)。その上で、ある程度カニが採集された地点では、カニの種ごとに単位時間あたりの捕獲個体数(食われやすさの指標;調査者が捕獲)と吸虫の寄生状況を調べた。主な仮説は次の2つである。 (1) 吸虫の寄生状況は各宿主群のうち最も多様性の低いものに依存する。(2) 宿主群の局所的な分布の重複の大きさや、各グループを構成する種の生態、特にカニ類の鳥による食われやすさが、吸虫の寄生状況に影響する。調査結果は現在解析中である。