| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-117

里山林を伴なった大学キャンパスにおける生態系 (2)野鳥群集の季節的・年次的変動

*桜谷保之,後藤桃子,小西恵実,福原宜美,岡田絢子,東寛子,八代彩子(近畿大・農・環境管理)

奈良市郊外の矢田丘陵にある近畿大学奈良キャンパス(面積110ha)は、里山林を伴なっており、移転時の1989年より生態系の調査を行なってきた。今回は1995年〜2006年の11年間(2005年はデータ数が少なく除外)の野鳥群集の季節的、年次的変動の調査結果を報告する。調査は月数回、ラインセンサス法で行なった。調査の結果99種の野鳥が記録された。各野鳥の季節的変動から、当地でも夏鳥、冬鳥、漂鳥、留鳥の区別が可能であった。年次的変動では、一次・二次消費者で留鳥のウグイス、エナガ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、スズメ、ハシブトガラス等はかなり安定していた。二次・三次消費者で留鳥のコゲラ、モズ等も比較的安定していた。夏鳥であるツバメ等も毎年の個体数は比較的安定していた。冬鳥のツグミ等は減少傾向を示し、また、夏鳥のサシバ等は年次変動が大きかった。この原因としては、繁殖地や越冬地である海外の環境の変化(森林伐採など)が考えられ、こうした海外の環境の変化が、野鳥を通じて当地の里山の生態系にも影響を与える"Teleconnection現象"が示唆された。11年間の個体数を累積して、多い順に積み重ねたところ、猛禽類の個体数が少なく、一次・二次消費者が多いという野鳥の個体数ピラミッドが認められた。また、この累積個体数から、近畿や奈良県のレッドリストに選定さてれいる野鳥種は、やはり個体数が少ない傾向にあることがわかった。以上のことから、当地は野鳥の生息環境としは安定して良好であるが、渡り鳥を通じて生態系が影響を受ける可能性もあることが示唆され、今後の里山生態系の解明や管理には海外の環境変化にも注目する必要があるように思われた。

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