| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-118
外来種は生物多様性に対する主要な脅威のひとつである。これまで外来種のインパクトを扱った研究は、ひとつの系のみに着目したものが多かった。しかし、複数の系を利用する外来種は少なくない。そうした外来種は、生物間相互作用を通して間接的に、生態系の境界を越えて影響を波及させる可能性が考えられる。本研究では、水域と陸域の2つの系で捕食を行う外来種ウシガエルを対象とした。本種は在来生物群集へのインパクトが懸念され特定外来生物にも指定されている。ウシガエルは水中の餌生物であるザリガニを主要な餌とする一方で、陸上の節足動物も捕食することが知られている。ザリガニが餌資源としてウシガエルの個体数を増加させ、ウシガエルが陸上の節足動物に対して影響を及ぼす場合、ウシガエルのインパクトはザリガニの存在によって増大する可能性が考えられる。そのような可能性を検証するため、(1)広域分布調査で2種の密度の相関を探り、ザリガニがウシガエルに及ぼすボトムアップ効果を評価した、(2)エンクロージャーを用いた野外実験で、ウシガエルが陸上の餌生物に及ぼすトップダウン効果を評価した。
広域分布調査の結果、ザリガニの密度はウシガエルの密度に影響を与える主な要因であり、ザリガニが餌資源としてウシガエルの個体数を増加させていることが示唆された。野外実験ではウシガエルの存在下でバッタ目が減少する傾向が見られ、ウシガエルが陸上の節足動物の密度を局所的に制限する可能性が示唆された。以上のことから、ザリガニはウシガエルの増加を介して陸上の生物群集に見かけの競争の影響を及ぼし、生態系をまたいで在来群集に対するインパクトを間接的に増大させている可能性が推察された。