| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-119

土壌層と樹冠層の節足動物群集はリンクしているのか? ‐土壌リター量の操作による樹冠層の節足動物への影響‐

*吉田智弘(森林総研・木曽,名大院・生命農),滝藤由貴(名大・農),肘井直樹(名大院・生命農)

森林生態系では、生食連鎖系と腐食連鎖系の生物群集が、それぞれ空間的に離れた樹冠層と土壌層において形成されている。しかしながら、樹冠層においてもササラダニやトビムシといった腐食由来の小型節足動物(腐食・菌食者)が多数生息しており、それらは土壌層から樹幹を介して樹冠層へと移動していることが明らかとなっている。このような土壌層から樹冠層への腐食・菌食者の移動(腐食流入;detrital infusion)は、クモ類等の捕食者への餌資源の供給となっており、樹冠層の節足動物群集の維持に大きな影響を及ぼしていると予想される。そこで本研究では、スギ林において土壌リター量を操作することにより、土壌層の節足動物群集を変化させ、その影響が樹冠層の節足動物群集へと波及するかどうかを検証した。

2007年4月にスギ人工林において、土壌リター量を操作し、リター添加区、リター除去区、対照区の3種類のコドラートを設定した。2007年8月に、樹冠層におけるトビムシの個体数密度は、対照区と比較してリター添加区とリター除去区において低く、ササラダニの個体数密度は、リター添加区で高く、リター除去区で低い傾向がみられた。一方、樹冠層における腐食・菌食者の捕食者と想定されるクモ類およびトゲダニ類の個体数密度は3処理区間で差はみられなかった。これらの結果から、土壌層と樹冠層の節足動物群集はリンクしており、土壌層の変化が樹冠層の節足動物群集へと及んでいる可能性が示唆されたが、腐食流入による樹冠層の捕食者に対する影響は、少なくとも今回の調査期間内では検出されなかった。

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