| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-123

渡良瀬遊水池において繁殖鳥類の分布を決める要因

永田尚志(国環研・生物)

利根川水系の渡良瀬遊水池は3300haの面積があり、そのうち1500haがヨシ、オギ等で被覆されている本州最大の湿地性草原である。渡良瀬遊水池で繁殖する鳥類の分布を決めている要因を明らかにする目的で、2006-2007年の繁殖期にかけて湿地内のそれぞれ91箇所および63箇所で鳥類の生息状況の調査を行った。調査には、各地点で10分間、半径200m以内に出現する個体を重複がないようにすべて記録するポイントカウント法を採用した。オオヨシキリ、コヨシキリ、セッカなどの湿地草原性スズメ目鳥類の他に、カルガモ、カワウ、カイツブリ、バン、クイナ、アオサギ、ダイサギ、ヨシゴイ、サンカノゴイなど水禽類を含む39種が記録された。各地点毎で見ると5〜11種類が記録され、すべての地点で記録され、優占種となっていたのは、オオヨシキリである。オオヨシキリの次に個体数が多いのは、堤防沿いの灌木で繁殖していたハシボソガラスであった。渡良瀬遊水池では湿地植生の他に、水路沿いの灌木林、沼杉の植林がみられるため、オオタカやサシバなどの猛禽類のほかにシジュウカラ、ウグイスなどの森林性あるいは灌木性の鳥類も繁殖している。また、渡良瀬遊水池はヨシ原を維持するために、毎年、3月にほぼ全域に火入れを行って管理している。ヨシ原の燃え広がり方は火入れ当日の風向きで決まるため、ヨシ原の焼きムラができる。これらの焼きムラが、オオヨシキリ等の密度分布にどのような影響を与えているかも同時に解析した。

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