| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-124
間接効果には密度媒介型と形質媒介型の2種類があるが、この2種の間接効果を直接比較した研究は少なく、特に水田生態系ではほとんどない。本研究では、イネOryza sativa、イネを食害するスクミリンゴガイPomacea canaliculata、スクミリンゴガイの有力な捕食者で逃避行動を誘発するクサガメChinemys reevesiiという捕食−被食関係にある三者系を用いて、これらの間接効果の相対的な重要性を明らかにした。
屋外において、イネの苗30本を植え、水田を模した0.27m2の実験区に、殻高5.8-8.5mmのスクミリンゴガイ150個体をいれた。捕食を模して貝密度を低下させる処理 (Density処理) として、1日当たり20%の貝を除去した。貝の逃避行動を誘発させる処理 (Trait処理) として、網かごに入れた甲長31.3-34.1mmのクサガメ1個体に、除去率20%分の貝を毎日与えた。Density・Trait両処理をした区、Trait処理のみの区、Density処理のみの区、どちらの処理もしなかった対照区という4種類の実験区を各5反復設定し、16日間観察した。
実験終了後に測定したイネの残存本数と乾燥重量は、Trait処理をしない区に比べ、Trait処理をした区で有意に高かった。Density処理をした区のイネの残存本数はDensity処理をしない区より有意に多かったが、乾燥重量は有意差がなかった。スクミの殻高はDensity処理をした区で有意に大きく、密度効果が示唆された。本実験では、密度媒介型間接効果は貝密度の低下によるイネへの食害の軽減と、貝の成長による食害の促進という相反する2種類の効果によって一部相殺され、その結果形質媒介型間接効果がより強く働いたと示唆された。