| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-125

アリ随伴性アブラムシがムラサキシジミのアリ随伴に及ぼす影響

*末次 主幸(佐賀大学農学部),鈴木 信彦(佐賀大学農学部)

北部九州のアラカシ上ではアリ随伴性のムラサキシジミ幼虫とアリ随伴性のアブラムシが頻繁に同一シュート上に存在する。本研究ではアリ随伴性のアブラムシの存在がムラサキシジミ幼虫のアリ随伴にどのように影響するのかを調べた。

室内実験で、アブラムシが寄生したシュートにいるムラサキシジミ幼虫とアブラムシが寄生していないシュートにいるムラサキシジミ幼虫にアリを随伴させた結果、アブラムシがいることでアリはムラサキシジミ幼虫を早く見つけ、幼虫へのアリの随伴数も増加した。これはアブラムシが多くのアリを誘引するためと思われる。そこで、野外でアブラムシとムラサキシジミの卵や幼虫の分布を調査した。調査では、シュート毎にムラサキシジミの卵数および幼虫数、アブラムシの種とその個体数、アブラムシおよびムラサキシジミ幼虫に随伴するアリ種とその個体数を調べた。その結果、ニホンケブカアブラムシが寄生していたシュートやアブラムシが寄生していないシュートよりもクリオオアブラムシが寄生していたシュートにおいて多くのムラサキシジミの卵が見られた。クリオオアブラムシはシュート下部に寄生しているのに対して、ニホンケブカアブラムシはムラサキシジミの産卵部位であるシュート上部に寄生していることが多かった。このことがムラサキシジミの産卵選択に影響を与えているかもしれない。アブラムシ非寄生シュートでは、ムラサキシジミの卵数に対して若齢幼虫数が顕著に少なかった。このことからアブラムシ非寄生シュートではムラサキシジミの若齢期生存率が低いことが判明した。

以上のことからアリに発見されない限り蜜を出さないムラサキシジミは、甘露を排出し続けてアリを誘引するアブラムシが寄生したシュートにいることで、アリから発見されやすくなっている可能性が示唆された。

日本生態学会