| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-135
群集動態の予測可能性は空間スケールとともに変化すると考えられる。多くの場合、ごく狭い空間スケールの群集(局所群集)の動態の予測可能性は低い。その理由として、小スケールでは、系外からの生物と物質の移入や環境の確率的な変動といった通常密度独立的に働くプロセスが、群集動態に大きな影響を及ぼすことが考えられる。一方、群集の空間スケールを拡大してメタ群集を対象にすると、系が大きくなることにより生物と物質の移入の影響は小さくなり、内部の空間的な異質性の増加により環境変動の影響が小さくなると考えられるため、密度独立的なプロセスが群集動態に及ぼす影響が小さくなると考えられる。このように、空間スケールの増大に伴い密度独立的なプロセスの重要性が低下するため、群集動態の予測可能性は空間スケールの小さな群集よりも大きな群集の方が高くなると考えられる。
本研究ではこの仮説を岩礁潮間帯固着生物群集の時系列データを用いて検証する。調査地は空間階層的に配置されており、複数の空間スケールの群集動態を推定することができる。データは2002年から2007年の間に得たものを利用する。密度依存的なデモグラフィーの変化と密度独立的なプロセスを考慮したモデルを作成し、モデルの予測と実際のデータを比較して群集動態の予測可能性と空間スケールの関係について議論する。