| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-136

資源密度と生息場所構造の相互作用が寄生蜂群集の種多様性におよぼす影響

*平尾聡秀,村上正志(北大・苫小牧研究林)

生物群集には生息場所を単位とする局所群集とその集合であるメタ群集という階層性が存在すると考えられる。生息場所が比較的均質な場合には、メタ群集における種多様性の維持機構として、種間での競争能力と移動能力のトレードオフの重要性が予測されているが、生息場所の異質性はソースとなる生息場所から他の生息場所への移入を伴うソース‐シンク効果を引き起こし、メタ群集の種多様性の維持に貢献すると考えられる。

野外の植食者‐捕食寄生者系は植物個体を局所群集の単位とした典型的なメタ群集構造を示す。これらの系では、一般に植食者と比べ捕食寄生者の種多様性が極めて高い。捕食寄生者の多様性を維持するメカニズムとしてトレードオフが重要であることは少数種系の室内実験により検証されている。しかし、野外では生息場所に大きな異質性が存在するため、野外で観察される捕食寄生者の高い多様性がトレードオフにより維持されているのかどうかは明らかではない。本研究では、野外の植食者‐捕食寄生者系における種多様性の維持機構として、内的な競争‐移動能力のトレードオフと環境異質性から生じるソース‐シンク効果の重要性を検証することを目的とする。

調査地は北海道大学苫小牧研究林に設置された5つの調査プロット(30m四方)からなる。潜葉性昆虫が食害する5樹木種について、調査プロット内の全樹木個体から潜葉性昆虫とその寄生蜂を4回定量的に採集した。寄生蜂の資源探索に伴う局所群集間の移動の重要性を評価するため、潜葉性昆虫に対する寄生の密度依存性を推定した。また、寄生蜂の競争能力と移動能力として、それぞれ種の寄生率と体サイズを推定し、そのトレードオフにより寄生蜂の種多様性が説明されるかどうかを検討した。さらに、ソース‐シンク効果を評価するため、近接するソース生息場所の大きさが寄生蜂の種多様性に及ぼす影響を検討した。

日本生態学会