| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-137

オイカワの食性に注目した河川食物網構造の変化

*近藤裕亮, 丸山敦,吉岡文子(龍谷大・理工)

食物網構造の変異とその変化要因の解明を目的に、従来の食物網研究で過小評価されてきた環境変化にともなう捕食者の食性変化に注目した野外実証研究を行った。調査は、2005年12月、2006年3,6,9月の4回、琵琶湖の流入河川9河川の下流部で行った。調査地ごとに、水質分析、および付着藻類、流下物、水生昆虫、魚類の定量採集と炭素・窒素安定同位体比分析を行った。また、食性変異が大きく、生息分布域の広い遊泳魚オイカワZacco platypusをモデル生物とし、消化管内容分析を行った。同位体分析の結果、河川水の栄養塩濃度と河川内部の生産者(付着藻類)の窒素同位体比(δ15N)との間に正相関があり、生産者のδ15Nが河川水の富栄養化の指標となることが確認された。δ13C-δ15Nマップ上で食物網構造を比較すると、富栄養化の程度により散布パターンが変化した。すなわち、河川水の栄養塩濃度の増加にともない捕食者の河川外部餌資源への依存性が高まる傾向が見られた。また、オイカワの消化管内容分析より、栄養塩濃度の高い河川ほど流下陸生昆虫などの外部餌資源を捕食している割合が高くなることが示され、同位体分析の結果と一致した。河川内部の底生無脊椎動物の組成は、河川水の栄養塩濃度と関係があり、栄養塩濃度の低い河川では、捕食者が河川内部の餌資源に依存している割合が高いが、栄養塩濃度の高い河川では、河川内部餌資源が乏しく、捕食者は外部餌資源に依存するようになると考察された。このような富栄養化による河川内部餌資源の減少、それにともなう捕食者の食性変化は、食物網構造を大きく変化させることが示された。

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