| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-145
生態系間のエコトーン形成とその空間変異パターンの解明は群集生態学における主要テーマのひとつである。空間変異は、特定の空間条件において決定論的に生じる規則パターンと確率論的な不規則パターンとの複合によって形成されるだろう。空間変異の形成機構を解明するには、まず両者のパターンを区別する必要がある。岩礁潮間帯の固着生物群集は、陸海の環境勾配に沿った小スケールの帯状分布を生じるため、エコトーン研究のモデルとして用いられてきた。本研究の目的は、垂直な岩礁潮間帯の帯状分布形成における規則的・確率的パターンの相対的重要性を解析し、さらにパターンの緯度・空間階層変異とその要因を解明することである。
調査地は、日本列島太平洋岸に 6 地域、各地域内に 5 海岸、各海岸内に 5 地点(合計 150 地点)を階層的に選定した。各地点に、平均潮位を中心に縦 100 cm、横 30 cm の固定コドラートを設置した。2003-2005 年 11 月に固着生物を除去し、5 ヶ月後の翌 2004-2006 年 4 月に、5 cm 目の格子板を用いて各格子点直下を占める固着生物種を記録した。これにより、同一環境条件下における加入パターンを繰り返し得ることができ、潮位幅 10 cm を解析単位として各年間で加入群集の Bray-Curtis 類似度を算出した。これを、各年内、各コドラート内で格子点をランダムに再配置させたランダム群集間の類似度分布と比較した。
加入時の帯状分布形成は、潮位や緯度、その場所の特徴よりも確率論的な過程に影響されることがわかった。また裸地の残りやすさは潮位によって異なり、その潮位パターンには緯度勾配が見られた。この緯度勾配は地域レベルの空間階層で生じており、温度や乾燥等の環境ストレスの地理変異が緯度勾配を生じる要因と考えられる。