| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-147
森林の土壌生態系は、多種多様な生物が生息しており、複雑な食物網を形成している。その食物網の構造を決める要因の一つである高次捕食者によるトップダウン効果は、土壌生態系において、栄養供給の制限で決まるボトムアップ効果よりは小さくなる傾向があるとされてきた。
一方、哺乳類であるトガリネズミは、主に地表や地中に生息する無脊椎動物を捕食することが知られる土壌生態系の高次捕食者である。トガリネズミは代謝が高く、個体あたりの捕食量が大きいため、土壌動物群集にあたえるインパクトは大きいと考えられる。
そこで、土壌生態系の高次捕食者であるトガリネズミによるトップダウン効果を検証するため、北海道大学苫小牧研究林に15m四方のトタン板で区切られたエンクロージャーを作成し、北海道に優占し、最も体サイズの大きいオオアシトガリネズミの導入区と除去区を設けた野外操作実験を行った。調査は2006年と2007年の6月から9月にかけて、各プロットで大型土壌動物(ミミズやクモなど)と中型土壌動物(ダニ・トビムシ)を定量的に採集する方法で行い、それと同時に落葉リターの各エンクロージャーのリター堆積量も計量し、さらにメッシュサイズの異なるリターバックを設置し、トガリネズミによるリター分解速度への間接効果も調べた。
一般化線形混合モデルでモデル選択を行ったところ、トガリネズミによる効果により個体数の変化する動物分類群が見られた。さらに、リター分解速度は、トガリネズミの存在により分解速度の変化が見られた。よって、トガリネズミは、土壌動物の捕食で土壌動物相の変化だけではなくリター分解速度まで変化させる働きがある可能性が考えられた。