| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-149

鴨川の河道内湧水における底生動物群集の特性

鈴木淳史(京大・工), 竹門康弘(京都大学防災研究所)

厳冬期に熱赤外ビデオカメラを搭載したヘリコプターを用いて鴨川,賀茂川,高野川の河道沿いを撮影した.そこで河川水の面的な温度分布を調べることによって地下水湧出地点を明らかにした.これらの地下水湧出地点付近と本流の底生動物を定量的に採集し群集の比較を行った.

地下水湧出地点は計7ヶ所発見され,そのうち賀茂川の上鴨神社西側(Site A),上賀茂橋上流(Site B),高野川の下鴨神社東側(Site C),鴨川の荒神橋上流(Site D),計4地点で調査を行った.各Siteの湧水と本流それぞれで礫底,抽水植物帯について各4サンプル,サーバーネットを用いて採集した.鴨川流域では1985年頃から河床整正の事業が減少するとともに,河床に植物群落が発達するようになった.そのため,礫底と抽水植物帯の双方で底生動物群集の採集を行った.

各湧水地点の群集には以下の特徴が見られた.Site A:ホソカ属,ダンダラヒメユスリカ属,イトミミズ科,在来のヌマエビが混生. Site B:アオサナエ,オジロサナエ,アカムシ,サカマキガイが混生.Site C:ヨシノコカゲロウ,フタツメカワゲラ属,ケユキユスリカ属,ミズムシ,サワヨコエビ属?の新種が混生.Site D:ヨシノフタオカゲロウ,コエグリトビケラ属,ホソカ属,ナミウズムシが混生.鴨川の河道内湧水はいずれも流速が緩やかなため,有機物が溜まりやすく,止水性の種,α中腐水性水域やβ中腐水性水域の指標種も現れたが,源流域や渓流域に特徴的な底生動物も混生していることがわかった.また,希少な在来種や湧水の固有種が見られるほか,季節外れの底生動物も認められた.このように河道内湧水は鴨川流域の底生動物群集の多様性を高めていることがわかった.

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