| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-151
渓流の落葉破砕食性昆虫(シュレッダー)は,その摂食破砕活動により微細有機物(FPOM)を生成することで,FPOMを食物とする収集食性昆虫(コレクター)をfacilitateしうることが指摘されており,これは河川連続体仮説の枢軸理念と位置づけられている。しかしながら,このようなfacilitationが生じるには,コレクターがFPOMの量に制限されていることが必要であり,この条件が成立する状況は限定的とする意見も多い。生態的ストイキオメトリー論は,食物と消費者体組織の元素比から,消費者の制限元素,余剰排出元素を予測する。演者らがシュレッダーの体組織のC:N:P比を詳細に調べた結果(第54回大会発表)にこの予測を当てはめると,一般に落葉リター‐シュレッダー系ではNに比べPが余剰となること,コレクターはシュレッダーに比べてN制限よりP制限が強いことが示唆される。したがって,落葉リター‐シュレッダー系において余剰となったPがバクテリアを主とするFPOM上の微生物によって取り込まれれば,FPOMのN:P比は低下し,コレクターはそれを摂取することでfacilitateされる可能性がある。本研究は,このプロセスが生じうる条件を特定するため,まず,分解中の落葉リターおよびシュレッダーの排出物のN:P比,コレクターの体組織のC:N:P比を明らかにすることを目的とする。
落葉広葉樹林およびスギ人工林内の渓流において毎月1回,シュレッダー及びコレクターをそれぞれ数種ずつ採集し,C:N:P比を測定した。各種のシュレッダーについて,閉鎖水槽内で絶食させ,排出物のアンモニア濃度とリン酸濃度を測定した。また,渓畔で収集した落葉広葉樹,常緑広葉樹,針葉樹を含む8樹種の落葉リターを風乾後,落葉広葉樹林および常緑広葉樹林内の渓流に沈め,0,2,6週間後のC:N:P比を測定した。