| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-152

底生動物群集に及ぼす流域地質の影響:花崗岩渓流と堆積岩渓流の比較

山中信彦,加賀谷隆(東大・農)

流域地質は、水質、河川形質特性、河床底質などを介して、河川生物に影響を与えていると考えられるが、それらに対する実証的な研究はほとんど行われていない。花崗岩流域の渓流は、堆積岩流域の渓流に比べ、一般にpHが低く無機イオンや栄養塩の濃度が低い、河床変動が生じやすい、底質に砂が多い、といった特徴がある。また、花崗岩礫は、堆積岩礫と比較して凹凸のスケールが大きい表面構造や、白黒のコントラストの大きい斑紋を示す。これらの特性は、河川底生動物に対して直接的に、もしくは食物条件を介して間接的に影響する可能性がある。本研究は、花崗岩渓流と堆積岩渓流の底生動物群集を比較することで、花崗岩渓流の底生動物群集の特徴を明らかにするとともに、その要因について検討することを目的とする。

栃木県思川水系の砂岩を主とする堆積岩渓流の渓流2地点と、花崗岩流域の渓流2地点において調査を行った。堆積岩渓流では砂が表層底質の面積に占める割合が2%以下であるのに対し、花崗岩渓流では15%以上を占めていた。また、前者では礫の内はまり石が30%以下であるのに対し、後者では30%以上であった。5月によく洗った堆積岩礫、花崗岩礫を、各地点にそれぞれ10個ずつランダムに設置し、2週間後に定着していた底生動物を比較した結果、堆積岩礫と花崗岩礫の間では、優占16分類群の定着個体数に有意差は認められなかった。一方、堆積岩地点群と花崗岩地点群の間では60%以上の優占分類群の定着個体数に有意差が認められ、堆積岩地点群に多い分類群がその内の80%を占めた。大会では、10月に行った掃流砂量調査の結果と、12月に底生動物群集の侵入定着実験と同様のデザインで行った付着藻類実験の結果を合わせて報告し、堆積岩渓流と花崗岩渓流で底生動物群集に相違をもたらした要因を考察する予定である。

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