| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-155

洞窟の生物群集とその構成種を決定する要因

*新部一太郎(鳥取大院・生物環境科学),星川和夫(同)

洞窟などの地下空間には地下環境に適応的な動物が生息しており,特殊な生態系を形成している。演者らはそうした特殊な生態系の構造について研究を進めているが,現状では構成種の生態や群集動態など基礎的な知見がほとんどないため,こうした情報を蓄積しつつある。本講演では,洞窟に生息する動物が洞窟のどのような環境要素を選好しているのかについて,環境要素の異なる複数の洞窟間で動物群集を比較した結果をもとに紹介したい。

洞窟の種別(石灰洞もしくは溶岩洞),生息空間の規模や地史的な時間,洞窟内の有機物量およびC/N比の組み合わせが異なる5地域の洞窟を比較した。それぞれの洞窟で異なる時期に複数回,複数人で任意採集を繰り返し,洞窟ごとの種構成を調査した。採集された種を,採集頻度の高い種(優占種)と中程度の種,低い種に区分し,採集頻度の低い種は隅産種として除き,残りの種を洞窟に生息する種として群集構造を描写した。それらの結果と各洞窟の環境要素(上記)について,単相関表や多変量解析を利用して解析し,それぞれの種がどのような環境要素に選好的であるのかを整理した。

群集構成を洞窟ごとに比較すると,特に優占種に関しては洞窟ごとに異なっている傾向がある。種と環境要素の解析では,ホラトゲトビムシ属は古い洞窟に多いことや,アヤトビムシ類がC/N比の高い洞窟で多く見られることなどが明らかになった。C/N比とアヤトビムシ類の分布については,洞窟内部のミクロな分布パターンにも同様の傾向が見られ,洞窟の動物群集を決めている要因について重要な示唆を与えている。

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