| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-159

動物プランクトン群集の栄養段階の時空間変動とそれをもたらす要因

*酒井陽一郎(京大生態研),武山 智博(新潟大),苅部 甚一,小板橋 忠俊,陀安 一郎(京大生態研),由水 千景(JST),永田 俊,奥田 昇(京大生態研)

食物連鎖長は、生産者から最上位捕食者に至る栄養段階の数を指し、その長さを規定する要因の解明は近年の食物網研究の中心的課題となっている。食物連鎖長が伸張する理由の1つとして、食物網の中間栄養段階に位置する生物が機能的に多様化することによって栄養段階が増加する可能性が示唆されている。しかし、この仮説を検証する実証研究は未だない。動物プランクトンは、体サイズのレンジが広いためギルド内捕食によって栄養構造が複雑化しやすく、また、その群集構造は生産者や捕食者の影響を受けやすい。したがって、上述の仮説を検証する材料として適している。そこで本研究は、高い環境異質性を持つ琵琶湖沿岸生態系において、その中間栄養段階に位置する動物プランクトン群集の栄養構造の時空間動態を把握し、その変動要因を解明することを目的とした。琵琶湖流入河川の河口沿岸域33地点および沖合1地点において、年4回、植物プランクトン(0.7−150μm)と動物プランクトン(>300μm)の採集を行った。同時に、現場の物理・化学・生物環境データを収集した。各プランクトン試料は窒素安定同位体比を測定し、動物プランクトン群集の平均栄養段階の推定を行った。また、動物プランクトン試料の一部を計数し、種組成も調べた。安定同位体分析の結果、動物プランクトンの栄養段階は顕著な季節変異を示し、同一季節においても調査地点間で約2段階の変異を示すことが明らかとなった。とりわけ、生産活動の活発化する5月の栄養段階は局所的に最大4.5まで上昇した。栄養段階の高い地点ほど肉食性の種が優占する有意な傾向を示した。最後に、動物プランクトンの種組成や栄養段階の時空間変異をもたらす要因の解析結果について若干の考察を加える。

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