| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-162
スギに穿孔したスギカミキリの重要な死亡要因は傷害樹脂道から滲出したヤニにまかれることである。ヒノキカワモグリガとスギカミキリの幼虫が同じスギ個体に穿孔した場合に、ヒノキカワモグリガの穿孔によって形成される傷害樹脂道によって、スギカミキリ幼虫の樹皮部の穿孔距離が短くなるのかおよびスギカミキリ幼虫の生存率が低下するのかどうか2年間調査した。生存率は、辺材部穿孔までの生存率、材被害を与えるまでの生存率および羽化までの生存率を計算した。ヒノキカワモグリガ幼虫の穿孔場所における内樹皮の傷害樹脂道の形成割合は第二年輪ではほぼ100%を示し、その他の年輪でも高く、この幼虫の穿孔は傷害樹脂道の形成を促していることがわかった。材被害を与えるまでに死亡した場合の幼虫の樹皮部における穿孔距離は、ヒノキカワモグリガの穿孔箇所数とともに短くなる傾向があり、ヒノキカワモグリガの穿孔で形成される傷害樹脂道によってスギカミキリの穿孔が阻まれることがわかった。辺材部穿孔までの生存率および羽化までの生存率は、ヒノキカワモグリガの穿孔箇所数の増加とともに低下するわけではなかった。一方、材に被害を与えるまでの生存率は、ヒノキカワモグリガの穿孔箇所数とともに低下する傾向がみられた。これらの結果から、ヒノキカワモグリガの穿孔はスギの防御機構を誘発させ傷害樹脂道の影響が最も大きい材被害までの生存率に負の影響を及ぼすことが明らかとなった。