| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-163

沖縄諸島におけるコキクガシラコウモリのエコーロケーションコールの地域間変異の維持機構の解明(仮)

*吉野 元(東北大・生命科学),Kyle Armstrong(京大・博),伊澤雅子(琉球大・理),横山潤(山形大・理),河田雅圭(東北大・生命科学)

キクガシラコウモリ類は長時間一定の周波数(CF)を含むエコーロケーションコールを発する。CFは、種間、種内の個体や集団間で変異が見られ、種内集団間でのCFに関する顕著な変異は、生態的・形態学的、さらには遺伝的分化を引き起こす可能性が指摘されており、彼らの多様化を理解する上で重要な現象である。しかし、変異はどのような要因によって生じ、維持されるのか、また、どのようにコールは親から子へと伝わるのか等は重要な問題だが、未解決である。

沖縄島に生息するオキナワコキクガシラコウモリの北部と中南部の地域集団間ではCFの周波数幅が6-8kHz異なる。マイクロサテライトを用いた集団遺伝学的解析の結果から地域集団間では遺伝子流動が十分にあることが示唆されたが、mtDNAのD-Loop領域の解析結果では、集団間で大きな遺伝的分化が見られた。これらの結果から、本種の雌は地域集団内にとどまる傾向が強く、一方で集団間の遺伝子流動は雄を解して生じていることが示唆された。

個体のCF部の周波数に関する決定要因としては、形態的・遺伝的・生理的な要因に加え、母子間の垂直伝播が重要であると考えられることから、沖縄島の地域集団間で見られた周波数変異の維持に関する仮説として以下の二つが考える。1)周波数は母から子への伝播に依存しており、周波数の地域間の変異は、雌の移動分散が小さいために維持されている。2)地域ごとに特定の周波数に対して、遺伝子流動の効果を弱めるほど強い選択が働いているため、周波数変異が生じ、維持されている。これらの仮説を検証するために本発表ではまず、集団内外の個体の血縁関係とCFの類似性との関係を調べることで仮説1)について検証した結果を発表する予定である。

日本生態学会