| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-166
真社会性アブラムシは兵隊カストを持っている、しかしその形態に変異性があるかについてはこれまで研究されていない。一般にアリ類などの膜翅目昆虫ではワーカーカスト内で形態分化(サブカスト)が生じる場合があることが知られている。このような膜翅目のカスト内分化は、主に孵化してからの餌条件、フェロモンなどの環境によって決定されると考えられている。一方、真社会性アブラムシの兵隊カスト(1令幼虫)は産出された段階ですでに形態、サイズが決まっており、もし形態に変異があるとすれば、それは膜翅目とは異なる至近要因によって決まると考えられる。
本研究では、真社会性アブラムシであるササコナフキツノアブラムシの兵隊カストについて、角長、前肢脛節長、前肢腿節長、前肢腿節太さの4種類の防衛形態形質と体長を計測し、また生殖カスト(1令幼虫)についても比較のためこれらを計測した。計測は、長野県内の3集団について6月から8月まで継続的におこない、季節、集団間で比較した。その結果、兵隊カストにおいては体長を除く全ての防衛形態形質が季節、集団間で変動していることがわかった。具体的にはどの集団においても季節がすすむにつれて防衛形態が大型化していた。一方、生殖カストについては、このような季節変動性は検出されなかった。
これまで真社会性アブラムシにおいて兵隊個体の防衛力はどの個体でも等しいと考えられてきたが、以上の結果から兵隊個体の防衛力は季節間、集団間で異なることが確認された。この変動性の至近・究極要因の解明は今後の課題であるが、スペシャリスト捕食者である2種の鱗翅目幼虫の季節的・空間的な発生パタンが関与している可能性が存在する。アブラムシと2種の捕食者の個体群データを用いてこの点について考察する。