| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-167
野生動物個体群の動態を把握するには、加入率の年変動とその要因を明らかにすることが重要である(McCullough 1979, Begon et al. 1996)。多くの有蹄類個体群では加入率の年変動が個体群動態に大きな影響を及ぼすことが指摘され(Gaillard et al.1998)、加入率の変動要因として旱魃や降水量、冬の気象、捕食及び個体群密度などが報告されている(Clutton-Brock et al. 1987, Bartmann et al. 1992など)。
筆者らは、北海道東部阿寒国立公園において1995年から2001年までロードカウント調査を実施し、エゾシカ(Cervus nippon yesoensis)の群れ構成を調査した。調査地域では狩猟は行われておらず、捕食者も不在である。冬期間の幼獣の自然死亡により、毎年4月中旬に「100メス当りの幼獣数」が最低値を記録した。一冬を越した100メス当りの幼獣数(加入率)は年によって大きく変動し(範囲6.3-50.0, CV=83.3%)、その至近要因は積雪深であることが明らかとなった。積雪によって餌資源の利用を制限されることが、幼獣の主要な死亡要因であると考えられた。
本発表では、2002年以降のデータも加味して、エゾシカ個体群の加入率の年変動とその要因について考察する。