| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-170
植食性昆虫の時空間動態を駆動する要因は何か。ヤノネカイガラムシの個体群変動は、寄主植物であるミカンの隔年結実に相関し、さらに樹木間でばらつくという、時空間的な特性を持つことが知られている(Tuda et al. 2006)。これらは、カイガラムシ雌の移動分散性の制約やボトムアップ効果(寄主植物の質)の樹木間変動に起因すると考えられるが、この系については定量的な検証はほとんどされていない。そこで本研究では、植食性昆虫ヤノネカイガラムシの個体群動態における寄主植物の空間配置と質の効果を検証する。我々は、ミカン樹木間の距離が東西・南北で異なることに着目し、カイガラムシの密度または増加率は、(1)樹木間距離が短い南北方向で空間自己相関し、また(2)葉質に依存する、と予測した。これらを検証するため、カイガラムシ雌の葉あたり密度とミカン葉の窒素量および含水率をカイガラムシ世代毎に5年間、毎木調査した。その結果、成虫の生存率が葉の含水率に依存し、個体群密度の増加期と減少期では異なる方向において有意な空間自己相関が検出された。
参考文献
Tuda, M., Matsumoto, T., Itioka, T., Ishida, N., Takanashi, M., Ashihara, W., Kohyama, M. and Takagi, M. (2006) Climatic and intertrophic effects detected in 10-year population dynamics of biological control of the arrowhead scale by two parasitoids in southwestern Japan. Population Ecology 48 (1), 59-70.