| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-180

谷津田周辺のため池におけるクサガメ Chinemys reevesii とミシシッピアカミミガメ Trachemys scripta elegans の成長の違い

*今津 健志(明大・院・農),倉本 宣(明大・農)

ため池は水が恒久的に存在しており、淡水性カメ類にとって重要な生息場所の一つであり、近年外来種による在来種との餌資源等の競争が問題視されている。そこで本研究は、クサガメを調査している千葉県市原市椎津の谷津田に隣接しているため池(面積約2.5ha)において、クサガメと外来種ミシシッピアカミミガメ(以下アカミミガメ)の成長の違いを、年成長量や年齢と体サイズ(背甲長)の関係等を用いて比較し、競争が実際に生じているかどうかを検討することを目的とした。

調査の結果、2006年にクサガメ174個体、アカミミガメ31個体、2007年にはクサガメ168個体、アカミミガメ39個体がため池で捕獲され、齢構成は両年ともに、クサガメは11歳以上の老齢、アカミミガメは2−3歳が多かった。両年とも捕獲された個体から求めた年成長量が3mm以上の個体は、クサガメは9.1%(4個体)であったのに対し、アカミミガメは66.7%(6個体)であり、最大値はクサガメが9.7mm(4歳メス)、アカミミガメが33.8mm(3歳メス)と20mm以上の差が見られた。

クサガメでは、背甲長が150mmに達している個体はオスでは存在せず、メスも殆どが14歳以上であったが、アカミミガメではオスが5−6歳、メスは3歳で背甲長150mmに達しており、若齢時から急速に成長していた。最大背甲長は、クサガメはオス142.8mm、メス189.8mmであったのに対し、アカミミガメはオス191.0mm、メス238.7mmであった。

両種とも雑食性であり、成長に極端な差が見られたことから、調査地のため池において、餌資源の獲得競争が行われている可能性がある。アカミミガメは3歳以下の個体が多いことから、ここ数年は調査地で確実に繁殖しており、今後さらに増加する可能性が高く、早急な対策が必要であると考えられる。

日本生態学会