| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-186
個体群動態の周期性は多くの生物で見られる。周期性を起こす機構については、密度効果など様々な要因が挙げられているが、被食ー捕食、寄主ー寄生といった種間相互作用もその一つである。寄主ー寄生者系の個体群動態の理論的研究では、寄生者の幼虫期間や寄主の成虫期間が振動の発生に影響し、振動が起こる場合には寄生者の幼虫期間が長いほど周期が長くなることが知られている。このように、寄主ー寄生者系の個体群動態の周期の長さとその安定性の関係は、理論的研究において多く調べられている。しかし、実験的に周期の長さとその安定性を調べた研究はほとんど行われていない。また、寄主ー寄生者系の実験においては、導入時の寄生者の寄生率がその後の動態へ影響を与えることが経験的に知られている。そこで今回、周期の長さに影響を与える要因として、寄生者導入時の寄主の初期齢構成に着目した。寄主の初期齢構成を変えた実験個体群を用いて、周期の長さと安定性との関係を調べることを目的とした。
実験材料として、個体群動態の室内実験に広く用いられているヨツモンマメゾウムシの一系統(iQ)と、その幼虫に寄生する寄生蜂であるコマユバチの一種(hp)を用いた。シャーレ内に80個の豆を入れ、iQ系統の成虫を導入し産卵させた。このiQの成虫の導入方法を変えることで、2通りのiQの初期齢構成分布を作った。その後、hpの成虫5ペアを導入し、24時間おきにシャーレ内を観察し、iQとhpのそれぞれの死亡している成虫を取り除き生きている成虫の数を記録した。また、新たに羽化した成虫が出てきた豆を取り除き、取り除いた豆と同数の新しい豆を導入した。
実験の結果、寄主の初期齢構成に関係なく、振動の周期が短いほど寄主と寄生者の共存期間が長くなった。このことから、周期の長さに影響を与える要因と、周期性がもたらす個体群動態の安定性に関して考察を行う。