| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-187

滋賀県近江八幡市奥島山に棲息するニホンイノシシの食性および果実落下量との関係

*萩原久子(滋賀県立大学大学院),近雅博(滋賀県立大学・環境),野間直彦(滋賀県立大学・環境)

イノシシの農作物被害対策を立てる上で重要な情報である食性を地域個体群ごとに把握し、それに対応した対策を立てる必要がある。食性には季節・年により変化があるが、その要因を明らかにすることも重要である。そこで、本研究は滋賀県近江八幡市奥島山に棲息するイノシシの食性を年間を通して量的に調査し、また、イノシシの重要な食物資源であると考えられる果実の供給量と食性の関係を明らかにすることを目的とした。

2006年1月から2007年12月にかけて調査地内で採集した糞を2mm目のふるい上で流水洗浄した後、残渣を11の食物項目に分類し、項目ごとに乾重量率を算出した。果実供給量調査の対象とした樹木はヤマモモ、コナラ、アラカシ、コジイの4種である。各種、調査地内において3〜5個体を選出し、各個体にシードトラップを1台設置した。

イノシシの主要食物は堅果(秋・冬期)、ヤマモモ(夏期)、タケ;タケノコ、地下茎(春・夏期)、イネ(秋期)の4項目であった。果実の供給量に年次的変化がみられ、ヤマモモは2006年に多く、07年にくらべ20倍以上あった。逆に堅果は06年に少なく、07年に多かった。食性におけるヤマモモ利用は供給量の変化に対応して年次的変化がみられた。一方で堅果は供給量に対応した変化がみられなかった。その理由として周辺環境が影響していると考えられる。周辺地域ではイネが栽培されており、同時期に嗜好性の強いイネが利用可能なことから、堅果への依存が強くならなかったと考えられる。また、ヤマモモの供給量が十分でない時期にはタケを多く利用していたことから、山際に広がっている竹林が餌供給地として大きな位置を占めていると考えられる。

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