| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-188
北海道に生息するオジロワシHaliaeetus albicillaとオオワシH. pelagicus(以下海ワシ類)の越冬環境には、自然性の餌場のほか人間活動によって餌資源が供給されている場所(以下、人為的な餌場)とがある。既存の報告から、近年では後者の越冬環境の占める比率が大きいと考えられるが、人為環境への侵出に伴う弊害など絶滅危惧種である両種の保全上の問題もある。
そこで、主な餌が人間活動から供給されていると考えられる二ヶ所の越冬地において、餌資源の供給状況と海ワシ類による餌資源利用の実態を明らかにするための調査を行った。調査は2007年1-3月に、漁業活動から投棄される雑魚類が主な餌資源と考えられる網走湖と、観光船による餌付けが行われている羅臼沿岸で行った。また、2008年の1-3月に補足的な調査を行い、その結果も発表内容に含める予定である。
網走湖では氷下待網漁の開始時期(1月中旬)から海ワシ類の個体数が増加し、湖内漁業エリアごとの投棄雑魚量と海ワシ類個体数との間には相関関係がみられた。また、漁業期間中に網走湖全体で投棄された雑魚量は一日平均約277 kgと算出された。一方、羅臼沿岸部で2月中旬と3月初旬に海ワシ類の分布と個体数を調べた結果、最大351個体が観察され、その80 %以上が餌付け場所周辺に集中していたことなどから、海ワシ類の多くは餌付け用の魚類に誘引されて生息していると考えられた。餌付け場所での観察の結果、餌を捲いてすぐに集まるのはカモメ類、ついでカラス類で、海ワシ類は警戒して近寄らないことも多かった。人間活動から供給されるこれらの餌資源は海ワシ類だけでなく、カモメ類やカラス類などの生息状況にも影響を与えていると考えられる。