| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-190

イワフジツボの加入量の長期広域変動

*山下友実,熊谷直喜,仲岡雅裕(千葉大理),堀正和(瀬戸内水研),野田隆史(北大環境),山本智子(鹿大水産)

海洋ベントスの個体群動態の最大の特徴は、ほとんどの種が幼生期に水中で浮遊生活を送ることである。この浮遊幼生期は個体群の分散に非常に重要であり、加入後の時空間変動にも大きな影響を与える。個体群の変動パターンを調節する要因は大きく分けて密度に依存する要因と依存しない要因に分かれる。浮遊幼生期の分散や時空間変動(加入前プロセス)は海流などの海洋学的諸要因に依存した密度非依存的要因によって支配される一方、加入後プロセス着定後には競争や捕食などの密度依存的要因の関与が大きいと考えられる。

本研究では岩礁潮間帯に生息するイワフジツボ(Chthamalus challengeri )を対象に5年間にわたる加入量の同調性を解析することにより、加入前プロセスの変動様式とその要因の解明を目的とする。特に、空間階層的な調査デザイン(3地域、5海岸、5調査点の合計75点の同時調査)を採用することにより、変動パターンおよび同調性の空間スケール依存性を検討する。まず2003年〜2007年に年3回(春・夏・秋)行った野外調査により得たデータを基に、各調査点における加入量の時間変動の類似性について多変量解析により明らかにする。さらに、各調査地点における変動パターンと、局所的環境要因(微地形や波あたりなど)、およびより広域な環境要因(水温、海流流軸からの距離、プランクトン量など)との関連性をGLMモデル等により解析する予定である。

これまでに、各調査点における加入頻度の時間変動のパターンの類似度を解析した結果、特に海岸間の加入パターンに大きな差が生じた。また、地域間でも類似度に有意差があったが、その差異は海岸間の差異よりも小さかった。今後は、加入パターンと着定後の変動パターンの同調性との関連についても解析を行いたい。

日本生態学会