| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-192

ミトコンドリア多型情報と階層ベイズモデルによるシカ個体群動態の推定

*山道真人(総研大),藤田剛(東大・農),吉尾政信(東大・農),鈴木牧(東大・農),浅田正彦(千葉県博),落合啓二(千葉県博),立田晴記(国立環境研),宮下直(東大・農)

分布拡大しつつある個体群において,個体群動態のモデルによる予測は保全上重要な課題である.しかし,個体の移動分散パラメータは直接観測することが難しいため,間接的な推定を行わなければならない.移動分散パラメータを個体数分布の変遷から推定する方法もあるが,シカのように移動分散行動に性差がある動物の場合,数の増減だけでは性ごとのパラメータ推定は難しかった.

そこで,1992年と2004年に房総半島において狩猟されたニホンジカ(Cervus nippon)個体の位置情報とミトコンドリア多型情報をもちいて,間接的に雌雄ごとの移動分散パラメータを推定した.ミトコンドリアDNAについては調節領域であるDloopがシークエンスされ,房総半島のシカ個体群には2つの主なハプロタイプが存在することがわかっている.

ミトコンドリアは母系遺伝を行うことから,1年分のスナップショットのデータからでも雌雄別の移動分散パラメータの推定が可能である.また,1992年と2004年のDNAデータが揃っていることから,12年分のシミュレーションを行い,パラメータの妥当性をより詳細に検討できると考えられる.さらに,2つのハプロタイプごとに個体群動態を考えることによって障壁の存在などを推定することもできるかもしれない.

糞カウントから得られた個体数分布を実際の分布と考え,個体数と各地域の狩猟努力量の積によって実際の捕獲頭数が得られると仮定する.各地域一律の妊娠・死亡パラメータとしてシミュレーションを行い,そこから狩猟努力量に応じて捕獲個体数を算出し,実際の狩猟データと比較した.これにより,狩猟努力量,分散率を場所ごとに階層ベイズモデルによって計算した.

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