| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-194

石狩低地帯周辺部におけるエゾクロテンとホンドテンの分布現状

*坂田大輔(北大・環境科学院),東正剛(北大・環境科学院)

北海道には在来種かつ地域固有種であるエゾクロテンMartes zibellina brachyura、本州からの国内移入種であるホンドテンMartes melampusが生息している。現在、このテン属二種の分布は、石狩から苫小牧にかけて広がる平野部・石狩低地帯を境に分かれ、東側にエゾクロテン、西側にホンドテンが生息していると考えられている(門崎1981)。先行研究は門崎の説を検証し、北海道東部ではエゾクロテンが、西部では1例を除いてホンドテンが確認されている。しかし、これらの研究では、両種の分布境界と言われている石狩低地帯の周縁部、特に東側の境界付近に関する生息記録がない。

そこで、本研究では、2006年から2007年にかけてこの石狩低地帯とその周縁部に存在する森林において自動撮影装置による生息地調査を行うとともに、道内の研究者やカメラマンなどからテンの写真や目撃情報の収集を行った。また、DNA分析による種の判定を目的としてテンの糞を採取した。

自動撮影による調査の結果、石狩低地帯東側に位置する5地点ではエゾクロテンを、西側に位置する3地点ではホンドテンを確認した。低地帯内の馬追丘陵に位置する2地点ではどちらのテンも確認されなかった。この他、糞DNAによる種判定の結果、安平町・平取町のサンプルがエゾクロテン、恵庭市・伊達市のサンプルがホンドテンと同定された。また、写真により低地帯東側の2地点と低地帯内の長沼町でエゾクロテンが、西側の4地点でホンドテンが確認された。従って、門崎の主張する両者の分布境界は現在も維持されていると言える。更に、長沼町におけるエゾクロテンの記録は、ホンドテンが低地帯内の馬追丘陵にまだ侵入していない可能性を示唆しており、重要である。

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