| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-199
近年、サケ科魚類の性判別がDNA分析によって出来ることが報告され、個体を解剖することなく基礎的な情報を得ることが可能になった。本研究の対象種であるサクラマスにおいても有効的な手法であることが報告されている一方で、遺伝子型と表現型による性が一致しない個体が存在することも知られている。本発表では、北海道全域においてサクラマスの遺伝子型と表現型の性を調査して、不一致個体の出現パタンを明らかにし、それら個体の出現要因を検討した。
調査は、北海道の23河川(日本海側10河川・太平洋側6河川・オホーツク海側7河川)を対象に547個体を捕獲して、生殖腺による表現型性とDNA分析による遺伝子型性を調べた。その結果、517個体(全体の95%)では遺伝子型性と表現型性が一致したものの、30個体(5%)では一致しなかった。また、性が一致しなかった個体の87%は表現型性が雌で遺伝子型性が雄であった個体であり、表現型性が雄で遺伝子型性が雌であった個体はわずかであった。表現型性が雌で遺伝子型性が雄の個体は積丹半島周辺で出現頻度が高く、ほとんどの個体が日本海に流れ込む河川で出現したのに対して、表現型性が雄で遺伝子型性が雌の個体は、オホーツク海側の河川で多く出現した。本発表では、サクラマスの回遊経路及び河川環境などから、これらの出現パタンおよび出現要因について考察する。