| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-200

無腸類ヒラムシの光退避行動は共生藻光合成に支配されている

*中村崇,神木隆行,山崎征太郎,YeongShyan Yuen, 山崎秀雄(琉大・理)

生物が生きていくには、エネルギー獲得と流出のバランスをとり続けることが必要不可欠である。その為の手段として、植物との共生によって光合成からのエネルギーを効率良く利用している動物群が存在する。特に、サンゴ礁域には造礁サンゴやシャコ貝に代表される、微細藻類を体内に共生させる海産無脊椎動物が多くみられ、無腸類ヒラムシの一種であるConvolutriloba longifissuraにも体内に単細胞藻類(Tetraselmis spp.)が共生している。本種は、“サンニング(Sunning:共生藻が存在する軟体部を葉状にして日中の受光効率を高める)”行動をとることで知られ、より光を受けられるサンゴ群体上などに集団を形成することが野外で観察される。本研究ではまず、強光をスポット照射することで、宿主が光退避行動を示したことから、異なる光強度領域下での集団分布パターンを比較することで宿主の行動への光環境影響を調べた。共生藻の光合成をモニターした結果、宿主の光退避行動が起こる光強度下では共生藻の光合成が著しい傷害を受けていることが明らかになった。さらに、宿主の退避行動が強光下での光合成への傷害を抑制すると同時に、組織溶解を伴う宿主自身の斃死を防いでいる事が確認された。これら一連の光強度に依存すると思われる行動の主導権が、宿主あるいは共生藻のどちらにあるのかは不明であるが、カタラーゼ添加により宿主の光退避行動及び斃死が抑えられた事から、強光ストレス時に生成される過酸化水素が宿主の退避行動に何らかの影響を及ぼしていることが明らかとなった。今回の結果は、宿主動物における光依存性の行動切り替えが、共生藻の光合成補助、光ストレスからの保護として機能しつつ、結果的に藻類との共生体としてのC. longifissuraの生存性を高めていることを示唆している。

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