| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-204

営巣木の伐採によるサギ類コロニーの個体数変化

*山口拓男(筑波大・生命共存),徳永幸彦(筑波大・生命共存)

サギ類はコロニー性の繁殖を行なう鳥類である。どこにコロニーを形成するか、どのコロニーで繁殖を行なうかは、個体の適応度に関わる重要な選択である。繁殖に適した場所にコロニーが形成された場合、そこにはより多くの個体が集まると考えられる。そのため、コロニーの個体数や分布を調べることで、サギ類のコロニー選択に関わる要因を解明することができる。先行研究では、コロニーの個体数や分布にコロニー周辺の採餌環境が影響すると言われてきた。しかし、毎年同じ場所に形成されるコロニーでは個体数が多くなる傾向がみられ、新規コロニーの形成要因が歴史性によって検出しにくくなると考えられる。また、茨城県南部において、コロニー形成初期に冬ねぐらから飛来すると考えられる個体は、採餌環境が整っていない時期にコロニー形成を行なうため、繁殖期の採餌環境を判断しているか疑問である。そこで本研究では、営巣木の伐採によるコロニーの移動と消滅に着目し、サギ類コロニーの形成に関与する要因を調べた。

まず、存続年数の効果を排除するために、伐採により移動したコロニーの移動前後の個体数を比較し、移動に伴う個体数変化とコロニー周辺の環境の変化との関係を検討した。また、冬ねぐらがコロニーの分布に影響している可能性を検証するために、冬ねぐらからコロニーへの個体の供給量について、冬ねぐらの分布と個体数を考慮した係数を求め、この係数を伐採により移動したコロニーと消滅したコロニーで比較した。その結果、コロニー周辺の採餌環境の変化がアマサギの個体数変化に影響する要因であること、近くに大きな冬ねぐらがあるほど、コロニーの営巣木が伐採されても新たなコロニーが近隣に形成されやすいことが分かった。これらの結果から、採餌環境がコロニーの個体数に影響しているだけでなく、冬ねぐらがコロニーの分布に影響している可能性が示唆された。

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