| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-205
外国産クワガタムシ・カブトムシは、1999年以降の規制緩和によって、2007年現在758種が輸入可能となり、輸入数も2004年には年間約106万頭にものぼっている。このような現状の中、在来種との競合、交雑など様々な問題点が指摘され、検証実験等が報告されている。しかし、その報告の多くは外国産クワガタムシの例である。外国産カブトムシも外国産クワガタムシと同様、定着、競合など生態系や在来種への影響等のリスク評価を行う必要がある。そこで、本研究ではコーカサスオオカブトムシChalcosoma caucasusが、成虫期・幼虫期で日本の野外で定着することができるのか、日本産カブトムシAllomyrina dichotomaと競合し、その採餌行動等に影響を与えるのかを野外及び室内実験によって明らかにすることを目的とした。
コーカサスオオカブトムシの日本への定着の可否については、コナラの樹液への適応、野外での成虫及び幼虫の生存を調べることで判断した。日本産カブトムシへの影響は、活動時間帯の重なりと餌場で両種が闘争した場合の状況を調べることで判断した。
調査の結果、コーカサスオオカブトムシの成虫は、野外でコナラの樹液を吸い、日本産カブトムシと同等に生存し、繁殖した。しかし、幼虫は冬に野外で生存できなかった。これらのことから、コーカサスオオカブトムシの日本への定着は一時的であることが示唆された。コーカサスオカブトムシの活動時間帯は、日本産カブトムシと重なる時間帯があり、餌場で闘争した場合、コーカサスオオカブトムシが勝つことが多かった。これらのことから、コーカサスオオカブトムシは日本産カブトムシと競合し、その採餌行動に影響を及ぼす可能性が高いと考えた。