| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-210

ミトコンドリアDNAからみたクロマルハナバチの地理的変異

*所諭史(茨大・教),五箇公一(国立環境研),山根爽一(茨大・教)

セイヨウオオマルハナバチBombus terrestrisは花粉媒介昆虫として1992年より日本に導入されているが、その生態影響が問題となり、2006年に外来生物法の特定外来生物に指定された。今後、セイヨウオオマルハナバチの使用は法的に制限されるため、在来マルハナバチの商品開発が進められており、既にクロマルハナバチBombus ignitusの商品コロニーが流通し始めている。在来種の商品利用は外来種による生態リスクを低減させる技術として期待されている。しかし法律上の区分である国境線は、人間によって定義された境界線に過ぎず、たとえ在来種であってもその生息域は限られており、また個体群も地域ごとに分化している可能性が高い。従って、在来種の商品化に伴う国内移送は局所個体群の遺伝的固有性を喪失させる恐れがある。さらに近年、韓国および中国においても現地のクロマルハナバチの商品化が進められており、アジアレベルでの遺伝的かく乱も想定される。そのためクロマルハナバチの局所個体群間における遺伝的な差異の定量的評価を早急に行なう必要がある。本研究では、アジア地域におけるクロマルハナバチの進化的重要単位(Evolutionarily Significant Unit)を設定する上での基礎情報を得ることを目的として、日本全国および韓国・中国よりクロマルハナバチ個体を採集し、ミトコンドリアDNA-CO1領域(約1000bp)およびCB領域(450bp)の塩基配列解析を行い、クロマルハナバチ個体群の遺伝的構造を調べた。その結果CO1領域におけるハプロタイプ系統樹によって、日本列島と韓国・中国の個体群は遺伝的に分化していることが示された。また日本列島のクロマルハナバチ個体群におけるCO1ハプロタイプの分布から、個体群の地理的変異の存在が示唆された。

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