| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-212
外来種が自然度の高い地域には分布できず、都市化の進んだ場所に定着する現象はアメリカシロヒトリ、アオマツムシ、ヨコヅナサシガメなどさまざまな種で知られている。しかし、これらの外来種がなぜ都市環境にのみ定着できるかはまだ十分に分かっているとは言えない。本研究で用いたヒロヘリアオイラガ(以下ヒロヘリ)も南方からの外来種であり、先に挙げた種と同様、都市環境で頻繁に見られる種である。ヒロヘリの繭は羽化後も長期間営繭場所に付着し続けるため、現在の分布に加えて過去の発生状況をある程度推測することが出来る。この特徴を利用し、2007年にできた繭とそれ以前の繭とに分けてヒロヘリの分布調査を行った。その結果、現在の分布は都市化された地域の道路沿いの並木や公園の樹木に限定されているが、過去にはより自然度の高い都市緑地内にも生息していたことが分かった。一方、山地には過去から現在にわたり分布は見られなかった。野外で主に利用しているケヤキ、イロハモミジ、サクラ、フユガキの葉を餌として用いた飼育実験では、イロハモミジにおける発育が比較的悪い傾向が見られた。しかし野外ではイロハモミジも他3樹種と同様によく利用されていることから、ヒロヘリの分布は必ずしも樹種の栄養的好適さとは関係がないことが示唆された。一方、鳥類はイラガ類の繭を冬季に捕食することが知られている。本研究の結果と先行研究による知見から、ヒロヘリの分布が侵入後時間の経過とともに変化した原因を鳥類との関係に焦点を当てて考察する。