| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-213
外来生物の侵入・定着は、生態系の様々な側面に影響を及ぼす。ソウシチョウLeiothrix luteaはチメドリ科に属する中国・東南アジア原産の外来鳥類であり、外来生物法に基づいて特定外来生物に指定されている。近年、ソウシチョウは四国の剣山地に侵入して、分布域を拡大している。この地域は最近ニホンジカCervus nipponの密度増加が顕著である。ソウシチョウは営巣や採餌にササ類の優占する低木層をおもに利用する。ニホンジカの高密度地域ではササ類の衰退がみられ、これがソウシチョウや競合する在来鳥類に対して影響を与えている可能性がある。そこで、ソウシチョウの侵入した場所で鳥類群集の調査を行い、その経年変化を調べるとともに、ササ類の成育状況について調べた。調査地は高知県香美市物部町のさおりが原で、ブナが優占する老齢天然林である。この調査地で初めてソウシチョウが記録されたのは1999年であるが、2002年の時点ではソウシチョウはかなりの個体数が確認されていた。ここに2kmの調査ルートを設定し、2003年、2006年、2007年の6月にライントランセクト法による調査を行った。また、2007年11月にササの成育状況を調査した。その結果、ソウシチョウの密度は増加傾向にあり、ソウシチョウと競合する可能性が考えられるウグイスやカラ類に減少傾向は認められなかった。林床はスズダケが優占していたが、調査ルートの一部で著しく衰退していた。しかし、スズダケの群落が残存している箇所もあり、スズダケのブッシュの中でソウシチョウの営巣が確認された。外来種であるソウシチョウや植生改変者であるシカの影響を評価するには、ソウシチョウ、在来鳥類、植生、ニホンジカの相互の関係について、さらに長期的に調べる必要があると考えられた。