| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-214

外来種コブハクチョウの行動と繁殖成功への給餌の影響

*土屋結(筑波大・生物資源),藤岡正博(筑波大・井川演習林)

コブハクチョウは、主にヨーロッパで繁殖・越冬しており、現在日本で生息しているものは、飼育されているものかそれらが逃げ出して半野生化したものと考えられている。コブハクチョウは、他種への威嚇・攻撃行動が激しいために水鳥の営巣を阻害することや、他のハクチョウ類を追い払う行動が観察されているため、WWFジャパンら(2004)による特定外来種提案リストに掲載されている。環境省のガンカモ調査によると、茨城県はコブハクチョウの生息数が全国でもっとも多く、霞ヶ浦周辺ではレンコン栽培への被害も出ている。にもかかわらず、餌付け場所や餌付けされているつがいが多く存在する。そこで、給餌がコブハクチョウの繁殖および行動に及ぼす影響を調査した。

調査範囲は茨城県にある霞ヶ浦、およびその流入・流出河川に設定した。2007年3月末から6月初めの間で3回調査地全域を回り、繁殖状況を調査した。確認した繁殖つがいについて、日中の時間帯を3つに分けて1時間ずつ各個体の行動と位置を1分毎に記録した。また、これらの調査中に餌付けが確認されたときには、直接観察やヒアリングによって給餌の頻度・量・内容を記録した。

抱卵期には行動別時間配分は雌雄で有意に異なり、雌は多くの時間を抱卵にあてていたのに対し、雄は休息・移動・採餌に雌より多くの時間をあてていた。育雛期には行動別時間配分に雌雄間で有意差はなくなり、また時間帯別でも違いはなかった。定期的な給餌が行われていたつがいと行われていないつがいを比較すると、卵数と行動には有意差がなかったが、定期的な餌付けが行われているつがいの方が、そうではないつがいよりも繁殖に成功した割合が有意に高かった。よって、定期的な給餌は新たに生産される若鳥個体数を増やしている可能性がある。

日本生態学会